薄毛対策の選択肢に自毛植毛を入れるべきか?

現在の薄毛治療の主役は、ミノキシジルとフィナステリドを中心としたものになっていますが、それ以外にも薄毛を治す方法には、様々な種類のものが存在しています。
「お金はいくらかかってもかまわないから薄毛を改善させたい」というのであれば、薄毛に有効な成分を頭皮に直接注入する『育毛メソセラピー』や『HARG(ハーグ)療法』、人工の毛や自分の髪の毛を頭皮に植える『植毛』といった治療法もあります。
また、薄毛を治すことは出来なくても、自分の髪の毛に人工毛を数本ずつ結びつけたり、人工毛を地肌に貼りつけるといった方法で髪の毛をボリュームアップさせる『増毛』なんて手段もあるにはあります。
この中でも、自分の髪の毛を頭皮に植える『自毛植毛』は、注目の薄毛対策となっているのですが、いざ植毛を行うとなると結構な勇気が必要になるんじゃないかと思います。
のちに後悔することがないように、自毛植毛を行うかどうかについては慎重に検討しなければいけないと思いますが、それには自毛植毛というものを正しく理解する必要があります。
目次
自毛植毛とは?
自毛植毛とは、後頭部から側頭部の抜けにくい毛髪を、脱毛した部分に移植することで薄毛を解消する方法のことを言います。もちろん、髪の毛が多いところから、少ないところに移植するだけなので、髪の毛全体の本数は変わりません。
前頭部から頭頂部の髪の毛には、AGA(男性型脱毛症)による抜け毛の原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)が数多く存在しています。さらに詳しく言うならば、男性ホルモンのテストステロンをDHTに変換させる酵素の5αリダクターゼ(Ⅱ型)が多く存在していことから、DHTが数多く存在することになります。
そのせいで、前頭部から頭頂部にかけて、薄毛になる人が多いわけなんですが、後頭部から側頭部の髪の毛には、5αリダクターゼ(Ⅱ型)がほとんど存在していないので、移植しても抜け毛にはなりにくいでし、髪の毛が休止期を迎えて抜けたとしても、また何度でも生えてきます。
これが自毛植毛の最大の魅力と言えるでしょう。
そして、自毛植毛を行う方法には、『FUE法』と『FUT法』の2種類があるのですが、この2つの術式についても簡単に説明したいと思います。
FUE法
メスではなく専用パンチを使って毛髪を毛包(頭皮の内側で毛根を包みこんでる組織層)ごとくり抜き、株(グラフト)※をひとつひとつ採取していきます。
※株(グラフト)とは、移植する毛包を数える単位のことで、通常1つの毛穴から約1~4本の毛髪が生えていることから、毛髪を数える「本」ではなく、毛包を数える「株」が使われています。
下の画像だと、毛根の周りの水色の部分が毛包になります。
そして、株(グラフト)を採取した後は、移植部分に株(グラフト)を埋め込んでいきます。
そのため、技術を持たない医師が行うと、毛根を傷つけてしまう確率が高くなるので、無駄になってしまう毛髪の数が多くなるというデメリットもあります。また、手術に時間もかかるので、FUT法よりも割高の治療費になります。
しかし、メスを使わないので手術痕が小さく済むだけでなく、痛みもほとんどありません。
FUT法
メスを使用する術式で、移植する髪の毛を頭皮ごと切り取り、それを毛包単位で株分けし植えつける方法となります。
頭皮を直接メスで切って縫合を行うので、回復までに時間が掛かりますし、人によっては痛みを感じる場合もあります。
しかし、FUE法と違い、無駄なく植毛ができますし、確実な生着率が期待できるというメリットもあります。
薄毛対策の選択肢に自毛植毛を入れるべきか?
今まで話したとおり、自毛植毛を行うと、5αリダクターゼ(Ⅱ型)の影響のない髪の毛を移植するので、抜け毛になりにくいですし、抜けてもまた生えてきます。
そう聞くと、良さそうに感じるかもしれませんが、私は自毛植毛はするべきでないと思っています。
ミノキシジルやフィナステリドを使用したり、その他の薄毛治療を行ったけれども、薄毛改善は難しかったというのなら、最後の手段として自毛植毛はアリかもしれません。
しかし、そうでもない限りは、薄毛対策の候補からは、自毛植毛はハズすべきだと思っています。
自毛植毛の問題点
一時期、視力を回復させるレーシック手術が流行ったことがあります。高額な手術代がかかるにも関わらす、手術をする人が後を絶たなかったのは、一度手術を行えば、二度と眼鏡やコンタクトレンズを使用しなくて済むからでした。
薄毛を改善させる方法には、数千円から始められるものから、100万円以上かかるのもまで、様々な種類のものがあります。そして、100万円以上かかるもののひとつが、自毛植毛になります。
100万円以上とはいいましたが、これは薄毛の進行状況によってかわってきます。数十万で済むこともありますし、100万円以上かかる場合もあります。いずれにしても、高額の治療費がかかるのは、間違いありません。
それでも、レーシック手術のように、今後一切なにもしなくていいのであれば、100万円という金額も高くはないのかもしれません。実際、自毛植毛した個所は薄毛に悩まなくて済むようになります。
(例)仮に、30歳でAGAを発症したとしましょう。
50歳までの20年間は、薄毛になりたくないと思ったら、その間は薄毛対策をしなければいけません。
月に5千円かけたとしたら、年間6万円かかるので、20年間のトータルでみると120万円ものお金が必要となってきます。
そうなると、自毛植毛の100万円より20万円もよけいにお金がかかってしまうことになります。
自毛植毛の100万円は、決して高い買い物ではないのです。しかしそれは、自毛植毛をしてない箇所が薄毛にならないならの話です。
確かに、植毛した箇所はその後の薄毛対策は必要ありません。しかし、前頭部から頭頂部にかけて移植してない箇所に関しては、その後もAGAによる薄毛は進行していくので、なにもしなければ、他の薄毛の人とは違う、おかしなハゲ方をしてしまいます。
なので、薄毛になりたくなければ、自毛植毛をしたとしても、その後も薄毛対策は必要となってくるのです。
さっきの例だと、100万円(自毛植毛費)+120万円(維持費)=220万円(合計)もの薄毛対策費がかかることになるのですが、そこまでのお金をかける必要があるのかを冷静に考えてみる必要があると思います。
自毛植毛を行うタイミングが難しい
それに、自毛植毛を行うとしたら、どのくらい薄毛が進行してから行うのがいいのかの判断も難しくなってきます。早めに自毛植毛を行えば、植毛範囲も狭くなるので、その分治療費は安くなります。
しかし、今後薄毛になっていくであろう場所の多くは、移植してないことになるので、その分薄毛のリスクは残ったままとなってしまいます。
薄毛が改善した後の現状を維持する作業も、そう簡単ではありません。
また、ある程度、薄毛が進行してからだと、今度は移植費用がかさんでしまいます。
薄毛治療は早いに越したことはないのですが、自毛植毛に関しては、早すぎるのも問題ありますし、遅すぎても問題があるので、どのタイミングで行うかの見極めが難しいと思っています。
まとめ
自毛植毛をどのタイミングで行うにしても、何年か何十年後かに薄毛を受け入れる(諦める)までは、その後も薄毛対策は必要となってきます。
だったら、別の薄毛対策に力を注ぎ、自毛植毛を行わない方が、髪の毛にもお財布にも、優しい結果になると思います。
もう一度言いますが、自毛植毛後も薄毛対策が必要なことを理解してますか?
自毛植毛を考えてる人は、他の薄毛治療も含め、どの治療法を行うのがベストなのかをもう一度考え直してもいいのではないかと思います。