リデンシルの原料と臨床実験から薄毛への効果を評価してみる

リデンシルはスイスにある化粧品原料メーカーであるインデュケム社(現:ジボダン社)が開発した成分です。2014年にドイツのハンブルグで開催された、インコスメティックという世界最大級の化粧品原料・技術の展示会で銀賞を獲得したことで注目されるようになりました。
「銀賞だったらもっと上があるんじゃないの?」って思った人もいると思いますが、インコスメティックは、化粧品原料・技術の展示会であって発毛・育毛専門の展示会ではありません。
人気のスカルプエッセンス『フィンジア』をはじめ、いくつかの商品が導入している『キャピキシル』という成分がありますが、キャピキシルが2011年のインコスメティックで銅賞だったことを考えると、リデンシルが銀賞をとったことが、いかにすごいことなのかがわかると思います。
ちなみに、2014年のインコスメティックで金賞をとったのは、『エマリウム メリフェラ』という乳化剤になります。
ここでは、リデンシルの原料に注目して、髪の毛の成長にどのようなアプローチをしているのかを見ていき、臨床実験の結果なども含め、リデンシルの評価をしてみたと思います。
リデンシルの原料について
リデンシルは、セイヨウアカマツ球果エキス、チャ葉エキス、グリシン、ピロ亜硫酸Na、塩化亜鉛などで構成されるスカルプケア成分となります。
これだけの原料が入っていると、リデンシルだけで何かの育毛剤のような感じもしないではないですが、リデンシルを構成する一つ一つの原料が、発毛・育毛にどのように影響しているのかを見ていきたいと思います。
セイヨウアカマツ球果エキス
セイヨウアカマツ球果エキスには、DHQG(ジヒドロケルセチングルコシド)という特許取得済みの分子が含まれています。
DHQGには、バルジ領域内にある毛包幹細胞(※幹細胞)と、毛乳頭内にある繊維芽細胞(毛乳頭細胞)を活性させる効果があります。
※幹細胞:様々な細胞へと変化する力を持つ細胞
なお、バルジ領域と毛乳頭の位置については、下記画像で確認できます。
次に、毛包幹細胞と繊維芽細胞が活性化することで、髪の毛の成長にどのような影響を与えているのかを、詳しく見ていきましょう。
バルジ領域(毛包幹細胞)
バルジ領域には、『毛包幹細胞』と『※色素幹細胞』いう2つの幹細胞が存在して、1990年に「バルジ領域に毛の発生・成長を司る幹細胞が存在する」というバルジ活性化説が提唱されて以降、さまざまな研究が進んでいます。
※黒髪のもとになる色素細胞の供給源
男性にはあまり馴染みがないかもしれませんが、脱毛の分野ではバルジ領域(毛包幹細胞)を壊していくことで、毛を生えてこなするSHR脱毛というものもあるくらいです。
そう聞くと、バルジ領域(毛包幹細胞)が毛の成長に重大な役割を果たしているのがわかりますよね。
髪の毛は『成長期』『退行期』『休止期』という期間を得て抜け落ちていくのですが、退行期末期に毛乳頭とバルジ領域が接近すると、毛乳頭からのシグナルにより毛包幹細胞が活性化します。
活性化した毛包幹細胞は、毛球に移動して毛母細胞になり、毛母細胞が細胞分裂を繰り返すことで髪の毛が生えてくることになります。
このような髪の毛が生えてくるしくみのなかで、DHQGは毛包幹細胞を活性化させ、毛包幹細胞が毛母細胞になるのをサポートすることで、髪の毛の成長を促しているわけです。
繊維芽細胞(毛乳頭細胞)
繊維芽細胞とは毛乳頭の中に存在する細胞のことで、活性化することでコラーゲンやヒアルロン酸を生成し、髪の毛の成長を促すことができます。
コラーゲンといえば、アミノ酸から生成されるたんぱく質で、お肌に必要な美容成分として知られていますが、やわらかでハリのある頭皮づくりにも役立っています。
また、コラーゲンには髪の毛を太くする作用もあるようで、アメリカの研究実験では、毎日14gのコラーゲンを2ヶ月間摂取し続けたところ、摂取前に比べて髪の毛がおよそ10%も太くなったそうです。
ヒアルロン酸は、水を非常に多く保持する能力があり、肌の保湿に効果を発揮します。ヒアルロン酸が増えると、弾力と潤いのある髪の毛が蘇ります。
チャ葉エキス
チャ葉エキスには、EGCG2(没食子酸エピガロカテキングルコシド)という成分が含まれています。
EGCG2には頭皮炎症の原因となるインターロイキン-8を抑制し、炎症を抑える効果があります。頭皮の炎症を抑えることで、炎症による抜け毛、薄毛を抑制する働きが期待できます。
グリシン
髪の毛の99%は『ケラチン』で構成されているのですが、ケラチンは18種類のアミノ酸が結合してでいたタンパク質になります。
その18種類のアミノ酸と比率は、
シスチン(15%)、グルタミン酸(14%)、ロイシン(10%)、アルギニン酸(9%)、セリン(8%)、アスパラギン酸(7%)、スレオニン酸(6%)、プロリン(5%)、グリシン(5%)、チロシン(5%)、バリン(4%)、アラニン(3%)、フェニールアラニン(3%)、リジン(2%)、メチオニン(1%)、トリプトファン(1%)、ヒスチシン(1%)、ヒドロキシプリン(1%)
となっていて、ケラチンの5%がグリシンとなります。
ピロ亜硫酸Na
ピロ亜硫酸Na(ピロ亜硫酸ナトリウム)には、酸化による腐敗を防止する機能があり、一部のシャンプーや育毛剤に使われているほか、食品用漂白剤やワインの酸化防止剤、化粧品原料やヘアカラーリング剤の酸化防止剤などに使用されています。
塩化亜鉛
亜鉛は、髪の主成分である『ケラチン』の合成・分泌に関与していて、亜鉛不足になるとケラチンの形成が滞ってしまい、髪にハリや艶がなくなり、ヘアサイクルが乱れ、薄毛の原因となります。
リデンシルには、亜鉛不足による脱毛低減の為に、塩化亜鉛(ジンククロライド)が使用されています。
また、塩化亜鉛は、歯石の沈着を防いだり、口臭の原因となる物質を発生する事を抑制してくれるので、マウスウォッシュなどにも使用されています。
リデンシルの臨床実験
リデンシルの臨床実験では、18~70歳の男性モニター26名に、リデンシル含有量3%の試験用トニックを84日間使用して頂きました。
プラセボ(有効成分を含まない偽薬)を使用したモニター結果と比較すると、成長期の毛髪数が9%増加し、休止期の脱毛率が17%減少するという結果が得られています。
また、こういった成分によくあるミノキシジルとの比較ですが、リデンシル1%とミノキシジル1%を10日間投与し、毛包の成長度を計測したところ、ミノキシジルが118%という数値を示したのに対し、リデンシルは214%という成長率を示しました。
この結果から「リデンシルはミノキシジルの2倍の効果がある」なんて言われていますが、髪の毛が2倍生えてきたわけではないので、誤解しないようにしましょう。
リデンシルの評価
リデンシルを配合していると育毛剤(医薬部外品)として販売することが出来ます。医薬品ではなく医薬部外品ということなので、発毛効果はあまり期待できないということになります。
しかし、臨床実験で成長期の毛髪数が増加し、休止期の脱毛率が減少していることからも、髪の毛の成長に効果があることは間違いないですし、キャピキシルにしてもそうですが、リデンシルもまだ歴史が浅いこともあって、本来のポテンシャルどおりの評価はされていないように感じます。
このような現状を踏まえ、現時点でのリデンシルの評価は、育毛剤としては高評価できるものの、発毛まで期待するのであれば、ミノキシジルを使えない(あるいは使用したくない)人だったら、リデンシル配合の育毛剤を選択肢のひとつに入れてもいいといったものになります。
実際に選ぶかどうかは、リデンシル以外の成分も大事になってくるでしょう。